本研究チームでは遺伝性皮膚疾患が疑われた症例の遺伝子解析やその病態解明、さらには治療開発を目指した研究を行っています。北大皮膚科には秋山真志先生(現名古屋大学教授)、乃村俊史先生(現筑波大学教授)と繋いできた角化症研究の歴史があり、現在も遺伝性角化症(先天性魚鱗癬、掌蹠角化症、自己炎症性角化症)に関する研究に力を入れています。
チームとして重視している点は大きく3つあります。一つ目は「診断」です。臨床・病理所見を主とした形態観察はもとより、日進月歩で進化する最新の遺伝子解析法を積極的に取り入れ、正確な診断に繋げたいと考えています。二つ目は「基礎研究」です。現在は角化症で生じる自然治癒現象のメカニズム解明とリードスルー治療薬の開発という二大テーマに注力しており、更なる知見を報告できるよう研究を進めたいと思います。そして三つ目は「治療」です。上述の基礎研究はいずれも将来的な治療応用の可能性を秘めていますが、すぐにという訳にはいきません。今診ている患者さんへの治療という意味で他疾患における既存治療が角化症の症状改善につながる可能性があるかどうかを検討することも非常に重要と考えています。
現在チームには鈴木翔多朗(客員研究員)、Jin Teng Peh、竹田真依が在籍しており、遺伝性皮膚疾患患者さんに還元できるような成果を目指して日々研究を行っています。
2016年以降の主な研究成果
- KRT1変異で発症するichthyosis with confettiとrevertant mosaicism (Suzuki S, Nomura T, Miyauchi T et al. J Invest Dermatol 2016)
- KRT10変異で発症するichthyosis with confettiとrevertant mosaicism (Nomura T, Suzuki S, Miyauchi T et al. JCI Insight 2018)
- 長島型掌蹠角化症に対するリードスルー治療 (Ohguchi Y, Nomura T, Miyauchi T et al. J Invest Dermatol 2018)
- TGM1に新規変異を同定した葉状魚鱗癬 (Takeda M, Nomura T, Miyauchi T et al. J Dermatol 2018)
- ロリクリン角皮症におけるrevertant mosaicism (Suzuki S, Nomura T, Miyauchi T et al. Life Sci Alliance 2019)
- 悪性黒色腫を生じた長島型掌蹠角化症 (Katayama S, Nomura T, Miyauchi T et al. Acta Derm Venereol 2019)
- 毛孔性紅色粃糠疹5型におけるrevertant mosaicismとDNA複製ストレス反応の変化(Miyauchi T et al. Am J Hum Genet 2021)
- 軽度の魚鱗癬症状を呈したGFB2変異による掌蹠角化症 (Kimura A, Miyauchi T et al. J Eur Acad Dermatol Venereol 2022)
- Hereditary Fibrosing Poikiloderma With Tendon Contractures, Myopathy, and Pulmonary Fibrosis (POIKTMP)の1例 (Takimoto-Sato M, Miyauchi T et al. Front Genet 2022)
- Hailey-Hailey病に対するアプレミラストの効果 (Yamaga M, Miyauchi T et al. Front Genet 2022)